概要
デルポイはパルナッソス山にあるアポロンの聖域で、前8世紀頃からギリシア世界で最も影響力のある神託所として機能した。三脚台に座った巫女ピュティアが恍惚状態でアポロンの答えを告げ、神官がそれを言葉にしたが、その内容はあいまいなことで名高い——ヘロドトスは、ペルシアを攻めれば大帝国が滅ぶと告げられたクロイソスが滅ぼしたのは自らの帝国だった、という物語を伝えている。ギリシア人はデルポイを世界のへそ(オンパロス)とみなし、そのオンパロスの石は今も残る。なお2001年以降の研究は、神殿の下の岩盤の断層からエチレンなどの陶酔性ガスが立ちのぼっていた可能性を指摘するが、恍惚状態の説明としてはなお議論のある仮説である。
役割
個人も国家も、植民、法、戦争について神託を求めた。スパルタの国制や数え切れない植民市が、デルポイのお墨付きを主張した。神殿には、自らを知ること、何事も度を過ごさないことを説く格言が刻まれていた。権威は富を呼び、諸都市の宝庫が聖なる道に立ち並び、聖域はピュティア大祭を主催し、その支配権をめぐって神聖戦争も戦われた。
その後
ローマ支配のもとで神託は衰えた。アポロンの館は倒れたと嘆く最後の神託は皇帝ユリアヌスの時代(362年頃)に結びつけられて伝わるが、その真偽は疑われている。聖域は4世紀末、テオドシウス1世による異教禁止の勅令とともに閉じられた。デルポイは今日ユネスコの世界遺産であり、この神託は西洋文化における預言の原型であり続けている。