概要
シャー・ナーメ(王書)は、詩人フェルドウスィーが977年頃から1010年にかけて完成させた約5万対句の叙事詩である。神話上の最初の王たちから歴史上のササン朝まで、651年のアラブによる征服に至るイランの王たちの物語を語る。
特徴
叙事詩は神話の時代、勇士ロスタムが活躍する英雄の時代、実在の王たちの歴史の時代に分かれる。アラビア語からの借用語が比較的少ない新ペルシア語で書かれ、ペルシア語とイスラーム以前の伝統の保存に大きく寄与したと広く評価される。後世の宮廷はこの詩を豪華な挿絵入り写本に仕立てた。1430年のバーイソンクル本や1520年代のシャー・タフマースブ本はペルシア細密画の頂点とされ、後者の「ガユーマルスの宮廷」はスルターン・ムハンマドの筆に帰されている。
歴史と影響
フェルドウスィーは1010年頃に詩を完成させ、後代の書き手が伝えるところでは、ガズナ朝のスルターン・マフムードに献呈したものの報酬に深く失望したというが、これは伝承であり確かな史実ではない。この叙事詩はペルシア宮廷文学の規範となり、その英雄たちは今もペルシア語圏の人々に親しまれている。散逸したシャー・タフマースブ本をはじめ、名写本の各葉は世界中の美術館の至宝となっている。