概要
際立たせているのは引き算である。イギリスのスーツは組み立てられる。毛芯を入れ、肩を詰め、裏を付け、仕立て屋が形を作り、体があとからそれを満たす。イタリアの答えは、布が許すかぎりそれを取り除く。肩は柔らかいままにするか、シャツのように寄せて付ける。上着は短く裁ち、ボタンの下は開いたままにし、裏は半分にするか落とす。袖ぐりは高く小さく取る。制約に聞こえるが逆である。袖ぐりが高いと、上着全体を引きずらずに腕が動く。これをもっとも押し進めたのがナポリで、ミラノとローマはより構造を残し、線を整えた。
着方と特徴
その結果、イギリスのスーツより体に近く、下に着込まずに着ることになる。ボタンは二つで留めるのは一つ、前裾は四角く合わせずに逃がして曲げる。ズボンは南の流儀では折り目のない一枚仕立て、北では折り目を取る。形を保つ芯がほとんどないため、布に働いてもらうほかなく、生地は軽く、織りは粗くなる。構造のなさは同時に、イタリアの上着がイギリスのものなら保つところで皺になる理由でもあり、しまい込むより着られたがる理由でもある。
歴史
ナポリの仕立てが名を上げたときには、すでに古いものであった。柔らかい流儀を定めた工房は一九三〇年代に成り、ロンドンの仕立てを、それに合わない気候へ作り替えた。それを産業にしたのは戦後の輸出である。一九五二年、ローマのブリオーニがフィレンツェで紳士服をランウェイに載せた。それまで存在しなかった発想である。イタリアの既製服も同じ道をたどって外国の店へ入った。柔らかい肩は一九八〇年代にジョルジオ・アルマーニの構築を解いた上着で再び世界に出た。詰め物を抜くという同じ主張を、はるかに大きな聴衆に向けてもう一度述べたものである。