概要
一つの品ではなく一群である。髷を挟む二本足の簪、髷の下へ差し込む平打、揺れる飾りを下げた長い簪、前髪に沿って挿す櫛、そして小さな絹の四角を折って花弁にし、針金の枝に留めるつまみ簪。意味を担うのは材である。鼈甲は身代のある家、銀は改まった席、彩色した木は娘。つまみ簪の花は月ごとに替わった。
着方と特徴
先に髪を結う。油をつけ、輪と髷にまとめ、その結い目へ挿す。簪が髪を留めるのではなく、髪が簪を保つ。枝ものは耳の上の横に、櫛は前の縁に沿って、揺れるものは動く位置に。糊も金具も使わない。髪型そのものが受けるように作られているので、外すときは挿した逆の順に抜き、一式がまとめて解ける。
歴史
江戸の髪型は二百年かけて凝っていき、簪の商いもそれに従って、簪しか売らない店と一つの材だけを扱う職人を生んだ。奢侈禁令は鼈甲と銀を繰り返し制限し、繰り返しかいくぐられた。この様式は髪型の残るところに残っている。舞妓・芸妓の装いでは月々の花が今もつまみの技法で作られ、婚礼や成人式の礼装の一式にも生きている。