概要
漢の官人は漆塗りの紗の冠を被り、その下に布を巻いた。綸巾はその下巻きが頭飾りそのものに昇格したもので、黒い絹を一幅、髪の上に巻いて結ぶだけの、骨も位階もない被り物である。そこに意味がある。これを着けて政務の座に出るのは、官人としてではなく読書人として出ることであり、官位が軽く軍が全てを決めた世紀には、その構えに独特の値打ちがあった。広袖の袍と羽扇と同じ衣裳である。
着方と特徴
布を畳んで帯状にし、額に当て、髻の上へ回して結び、端は垂らすか押し込む。芯がないので形は下の髻に従い、冠なら枠が果たす役を、着ける人自身の髻が果たす。一息で被れ、馬上でも落ちない。戦のさなかに文人の顔で立ちたい者に似合ったのは、その二点も含めてのことである。
歴史
この頭巾は一つの物語と切り離せない。『三国志』とそこから育った小説のなかで、諸葛亮は素の頭巾に羽扇で戦を指図する。その像はあまりに強く定着し、のちの中国語はこの頭巾をそのまま諸葛巾と呼ぶ。宋や明の士人は、それと知って引用するようにこれを被った。冠の下着として始まったものが、役を演じる衣裳として終わったのである。